第20章 春雨編 (注:R18 本番なし)
「じゃが、こんな木を倒すような輩じゃ。
生身の人間ではあるまい。」
「………………。」
おじいさんが触れる木は
樹齢何百年も経っていそうな大木。
しかし、途中から
無様に大木がぼきりと折られている。
生身じゃないというと、天人か?
「…その事なんだが。」
今度は柳生輿矩が口を開いた。
「九兵衛は、昨日の17:30頃に
澪に会っているのだが、その時には
まだ仕事だと言っていたらしい。」
「17:30?もうとっくに
仕事は終わってるはずですよ。
昨日は残業してないですし…。」
昨日、澪は真っ直ぐ家に
帰ったはずだ。
帰る前に少し話したから覚えてる。
俺はそう言ったものの、
柳生輿矩は首を振った。
「だが、澪はそう言った。
九兵衛に先に帰るよう言ったらしい。
………言葉の真意は分からんが。」
「フゥー………なら、後でソイツに
詳しく話を聞かせてもらえるか。
聞きてぇ事がいくつかある。」
副長が2本目のタバコに火をつける。
さっきから、ペースが速い。
「ああ、構わん。
澪のためだ。柳生家としても
全面的に協力する。ただ…」
「……ただ、なんですかィ?」
「九兵衛にはワシから話させてもらえるか。
こんな現場を見せるわけにはいかん…。」
柳生敏木斎が首を振る。
九兵衛って、澪から聞いたことがある
10いくつの女の子なんだっけ。
「…………そうだな、それがいい。」
柳生輿矩もその答えに頷く。
柳生家の2人の意見は一致しているらしい。
「………………分かった。
俺は最後に澪に会った時の
様子を聞きてぇだけだ。
アンタらの話が終わったら聞かせてもらう。
それでいいだろ。」
「それなら、大丈夫だ。」
「…山崎、とりあえずここ通行止めにしとけ。
それが、終わったら事情聴取だ。
総悟、一旦屯所戻るぞ。」
「へーい。」
「了解です。」
俺は現場保全のためにそこに残されて、
副長と沖田隊長はそのままパトに乗って
行ってしまった。
柳生家の2人も
屋敷に戻る、と言ってしまい
俺は1人、階段の入口で
他の部隊の応援を待った。