第20章 春雨編 (注:R18 本番なし)
(退視点)
階段を上ると、血の噎せ返るような臭いがして
「…………こりゃひでぇや。」
沖田隊長がぼそりと呟いた。
階段を上った先にある広場には
床には大量の血痕が広がっていて、
そのど真ん中に
刀が1本折られている。
惨状とは、このことだ。
「……うぷっ、」
独特な臭いに頭がクラクラして、
胃からせり上がってくるものを
無理矢理飲み込む。
「ほれ、警察手帳じゃ。本物じゃろ?」
「これ、澪の…。」
ちんまりとしたおじいさんに
警察手帳を渡される。
開くと、血がついているものの、
神崎澪、という名前は
確認することが出来た。
「……………チッ。」
それを横目でみた副長が舌打ちをする。
澪は、ここで何かに
巻き込まれたらしい。
「……この刀も、ウチのですぜィ。」
沖田隊長は折れた刀をぼんやりと見つめている
持ち手にもどっぷりと
血がついている刀。
その周りにある出血量を考えると
絶望が頭をよぎる。
「…副長、もしかして澪は……」
「うるせぇ。」
タバコをふかす副長の目は
悔しさと怒りに溢れている。
「…まだ死んだっていう証拠は
見つかってねぇよ。
俺ァ、澪に会うまでは信じねぇ。」
「……同感でさァ。」
沖田隊長は枝で澪の刀をつつく。
「さっさと見つけ出してやらねェと
このまま彷徨いてんだったら
死にやすぜ、本当に。」
その言葉に、おじいさんが口を挟む。
「…………血の跡が、階段の手前で
途切れておる。
それ以外の場所は
隠密隊が手がかりを探しているが
今のところ何も見つかっておらん。」
「手がかりは無し、か……。」
副長がタバコを地面に落とし、
踏みつけて火を消す。