第20章 春雨編 (注:R18 本番なし)
「……誰からだ。」
後ろを見ると、
朝から素振りをしていたらしい
土方コノヤローと目が合う。
竹刀を持ったその体は汗ばんでいた。
「柳生家のジジイから事件の通報でさァ。
奴によると、澪が
やられたらしいんでィ。」
「んだと……?」
土方コノヤローは俺から目を離して
舌打ちをした。
そして通りすがりのザキを捕まえる。
「チッ……オイ山崎、車用意しろ。」
「え、あ、車?こんな朝っぱらからどこに?」
「いいからさっさと用意しろ。
あと、朝礼は抜けるって
近藤さんに言っとけ。」
「りょ、了解っす!!」
ザキが縁側を走っていった後、
土方コノヤローはタバコに火をつけた。
「行くんですかィ?土方さん。
ただのジジイの戯れ言かもしれねーですぜ。」
「……いや、さっき澪が
家に帰ってねぇっていう電話があった。
それは確か、柳生家の隠密からだ。」
隠密隊といえば、元澪の部下。
柳生家の隠密隊は、
かなり厳しくまとめられてると聞く。
…………となると。
「………その話、本当かもしれねぇぞ。」
土方コノヤローがふぅ、と
タバコの煙を吐く。
煙は、俺の心のように
空をぐらりぐらりと漂って、消えた。