第3章 過去編
あの時の天人の言ったことが本当なら
俺にはもう…
「…………いいえ。
今戻っても俺の居場所は…もうありません。」
涙がこぼれそうになるのをグッと堪える。
声も少し震えていたかもしれない。
それでも、俺の思いはちゃんと伝えなきゃ。
そう思った。
いつの間にか、全員の目が俺に向いていた。
「………………うむ。お主の事は分かった。」
敏木斎がこくりと頷いた。
「実はこんな会を開いたのはのぉ、
理由があるのじゃ。」
「理由……?」
俺がそう聞き返した瞬間、
今まで黙っていた輿矩が口を開いた。
「ちょちょちょちょちょ!パパ上!
待ってって!」
「お主……いや澪ちゃん。ワシはのぉ…」
「あーーー!あーーーーーーー!
ダメダメダメダメダメ!絶対ダメだって!
パパ上、どうかそれだけは……」
「いや、やはりワシはワシの直感を
信じてみようと思うんじゃ。」
「ほんとにダメー!ちょっと!そこ!
ほら!耳塞いで!!!」
「澪ちゃんを柳生家に迎えたいと
思ってるのよね。」
「…………え?」
「えええーーーーーっ!!?」
思わず立ち上がって俺は敏木斎を見下ろす。
「いっとくがワシはマジのマジじゃよ?」
「あぁ…パパ上…それだけは………」
「こやつの事は無視して良い。
皆も、それで良かろう?」
周りを見渡すと、
俺の事を受け入れたよう目で
俺を見ていた。
「……それとも、貴方が嫌ならば、
ここを出ていっても良いですよ。」
東城が俺を見てふわりと微笑む。
俺は、いてもいいのか。この場所に。
居場所のない俺を……
…受け入れて、くれるのか
「これから、よ、よろしくお願いします!!」
みんな、ごめん。
俺…もう少しだけ、生きてみるから…
そこで、見ててくれ。
俺は懐にある教科書をぎゅっと握りしめて
精一杯頭を下げた。