第3章 過去編
「攘夷志士ねぇ…
今戦争に参加している者ということですか。」
北大路が眼鏡をかちゃりと上げて言う。
「はい。」
「ほら!ほら見なさいパパ上!!
攘夷志士なんて、天人に逆らう
馬鹿どもの集まりですぞ!!」
輿矩が立ち上がり、俺をこれ見よがしに
指さした。
自然と拳に力が入った。
俺を馬鹿にするのは構わないけど、
銀時や皆を馬鹿にするのは許される事ではない
皆、自分の志があって攘夷志士になった。
命にかえてもやりたかった事があるのだ。
だからこそ、馬鹿にされるのは遺憾だ。
「………。」
すると、パン、と軽い音がする。
敏木斎がハリセンで
輿矩の頭を叩いたのだった
「少し黙っておれ、輿矩。…続けなされ。」
敏木斎に言われ、俺は今までの経緯を話した。
隠密で失敗したこと、
逃げ出したこと、
途中で追い詰められたこと、
そして…崖から飛び降りたこと。
「……九死に一生………いやそれ以上の
確率で生き残ったわけか。」
西野が腕組みをして、ため息をつく。
お、この筋肉ハゲ。やるな。その通りだ。
「ですが、崖から落ちた身…。
もしかしたら、死んだ事に
なってるかもしれませんね。」
北大路が顎に手を当てて目をそらす。
いちいちインテリっぽいポーズをしているのが
見ていて面白い。
「もしかしなくてもそうだと思いますがね。
もし生きていると踏んだなら、
川の下流辺りで貴方がいないか
探したはずですから。」
東城は冷静に首を振る。
彼の言う通り、追っ手は確かに来なかった。
あそこで追っ手が来ていたら
俺も死んでただろう。
「そうじゃの。だが、崖から落ちたのじゃ。
それ以上でもそれ以下でもない。
天人達はお主の仲間に死んだと
ハッタリをかけると思うが
死亡宣告はできぬじゃろうな。」
「………………。」
「………どうする?
お主は、また戻りたいか?」
敏木斎が俺に聞く。
脳裏に銀時達の笑った顔が浮かんで、
………すぐに消えた。