第3章 過去編
「お言葉ですが輿矩様。
この者は先程若にも名を聞かれましたが
同じことを答えています。間違いないかと。」
「ぐぬぬ………」
東城の言葉に輿矩が黙る。
黙ったのを見て、敏木斎が続けた。
「…で、年はいくつじゃ?」
「えっと…16、です。たしか。」
右手で年を数えながら答える。
戦争のことに頭がいっぱいで、
正直年齢なんて忘れていた…。
戦争に参加した年数を考えるとおそらく
そのくらいだろうな。
「若とは4歳差か…。」
東城がボソリと呟く。
「そうか。16か。若い、若すぎじゃ……」
敏木斎がまじまじと顎を触る。
まぁ、アンタにとったら16なんて
50年以上前だろうね。
「そうかの…それなら尚更聞きたいのぉ。
どうして若造の16歳の澪ちゃんが、
山の中で行き倒れていたか。」
ギクリ、と肩が揺れた。
核心をつかれた。
…いや、そりゃあ気になるだろうね。
皆の目線が俺に集まる。
何を言うべきか…どう伝えれば………
汗が顔をだらりと伝った。
「………………」
……いや、もう、
ここは正直に話すしかないだろう。
俺は真っ直ぐ敏木斎の顔を見た。
「俺は…神崎澪です。
攘夷志士……やってます」