第20章 春雨編 (注:R18 本番なし)
「ーーらぁっ!!」
それと、同時に。
俺は懐に仕舞ってある忍者刀で
奴の両足のアキレス腱を傷つけた。
「ーーチッ!」
相手が俺を睨み、
思い切り蹴られた俺は
ゴロゴロと転がされ、仰向けになった。
「ったく、そんな事で
気を紛らわしたつもり?」
「……………まぁ、最後の悪あがき……だよ。」
これで………いい、ハズだ。
「………………ナニコレ。」
すぐに症状は出始めたようで、
相手の笑顔が引き攣った。
足に力が入らなくなり、膝が笑っている。
「…………忍者といえば……毒っしょ?
夜兎とはいえ……毒には勝てない……から。」
「…………チッ、毒?そんなの、
毒抜きすれば……」
「……毒抜き?
多分今、膝まで毒が回ってるでしょ。
膝を切るしか、方法はないけど。いいの?」
「………………。」
「ちなみに、全身までは……あと5分。
…………心配しないで、死なないよ。でも
1週間力が抜けてまともに動けない…。」
1週間、つまり。
「もう、若は追えない……。」
俺がにやりと笑うと、
相手がギロリと俺を睨んだ。
ただ、その場からは1歩も動けず、
立っているのが精一杯の様子だ。
「……………じゃあ、俺、帰るから。」
よたよたと最後の力を振り絞って立ち上がる。
さて、遅くなったけど、帰ろう。
早く帰って、寝たい。
明日も仕事なんだ。
「そうはいかないな。」
茂みから男の声がして、
ガンと頭に衝撃を与えられる。
俺は声も出すことが出来ずに
ぐらりとその場に倒れ込んだ。
「……………ッ」
散りゆく意識の中、俺は
伝えられなかった言葉を
呟いていた。
「わか………ご…め……ん……ね…。」