第20章 春雨編 (注:R18 本番なし)
「…………ここなら、誰も通らないかな。」
柳生家の屋敷の山の麓。
もう夕日も落ちかける頃、
この山道に続く道を通る者は
ほとんどいなくなる。
周りは木に囲まれており、
少しの広場のようになっているその場所は
刀を交えるには丁度いい広さだ。
「……………俺に何の用?」
くるり、と後ろを振り向くと
木の影から人がひょこりと顔を出した。
「ありゃ、気付いてた?」
出てきたのはオレンジ色の髪の少年だった。
ニコニコと笑いながら出てきた彼に
俺をストーカーしていた事の
悪気は全く無いようだ。
「まぁ……そりゃあ、ね。」
あんなにピッタリくっついてきたら、
誰にだって分かるだろ。
大体、なんで俺をつけたりなんか…………
「そっか。じゃあ、遠慮なくーーー」
そう思ったも刹那、
次の瞬間には拳が飛んできていて、
思わず避けた。
「危なっ!」
「ーーよッと。」
次は腹に蹴りが来た。
バク転をするように交わし、
奴から二三歩距離をとる。
「な、な、な、何するんだ!いきなり!」
なんだコイツ、頭おかしいんじゃないの!?
「なんだ、結構動けるじゃん。
君のオニイチャンより動けるんじゃない?」
「………はぁ?
俺、兄貴なんていないけど。」
俺が首を傾げると、
少年は地面を蹴り、拳をお見舞いしてきた。
「だから危ないってば!!」
間一髪、彼の体を
すり抜けるようにして避けた。
………コイツ、本気で俺を殴りに来てる。
「とぼけても無駄だヨ。
君だって言ってたじゃん。
緑色の女の子にさぁ……。」
「緑……?ーーーって!おい!!」
今度は拳が連続で2発と、蹴りが1発。
「…うーん、手応えなし。
なんか、ハエみたいに
すばしっこくてイライラしてくるよ。」
もちろん、全部避けた。
俺だって伊達に色々
くぐり抜けてきたわけじゃない。
…………ただ、後ろには木があり、
もう左右にしか逃げられない。
「……………緑の女の子………あ。」
もしかして、たまさん?
ってことは…………
「……まさか、銀時?」