第19章 トッシー編(原作沿い)
(三人称視点)
「…………ぐぁっ……!!」
土方が顔面にヒットをもらい、
リングに倒れ込んだ。
「トッシーーーっ!!」
気付いたら澪は叫んでいた。
オタクなんて、トッシーなんて
大嫌い、だったはずなのに……………、
いつの間にか、その対戦に
夢中になっていたのだ。
しかし、澪の声援にも関わらず
土方は起き上がらなかった。
審判がカウントを叩いても
拳1つ動かさない。
「しょ、勝者、寺門通親衛隊ィイイイ!!」
「「「「ワアアアアア!!!」」」」
周りは歓声に包まれ、
審判に手を掴まれた新八はフラフラと
立ち上がった。
新八の意識は、ほとんど無いようで、
目の焦点は合っていない。
しかし、そんな事は、
澪にはどうでもよかった。
「トッシー………っ、」
「……澪君!?」
彼を一番慕っているハズの
近藤よりも先に、
澪はリングに躍り出た。
「トッシー、トッシー!!
目を開けてよ……。」
何故か、澪の目には
涙が溜まっていた。
彼にもどうしてそうなのかは分からなかった。
だが、彼の中で、土方に対する
嫌悪感は塵一つなくなっていた。
あんなに触られるのが嫌だった彼は
自分から土方に触れ、声をかける。
「澪子………氏………?」
「………トッシー!!」
土方は澪の声が
聞こえているのを知ると、
ゆっくりと目を開けた。
「……夢…なのか…い?
君が…………いてくれる……なんて。」
「………夢で、こんなに殴られるなんて、
俺だったら嫌です……っ。」
「ははっ………間違いない……ね。」
土方は自分を嘲笑った。
澪に最後に看取ってほしいと
十四郎に伝えた。
そしてそれが今叶っている。
その幸せを噛み締めた。
勿論、本音を言えば、
これからもトッシーとして
やっていきたかった。
しかしそれは、もう許されない。
澪とも……もう2度と
会うことはないだろう。