第19章 トッシー編(原作沿い)
「あ、あ、あの、沖田隊長……。」
「なんでィ。」
「い、い、いま、いま、人が……」
「人が、どうした?」
「いや、人を、人をはねて……」
「はねてなんかいねぇよ。
ちっと当たっちまっただけでィ。」
「それをはねたって
言うんじゃないですか!?」
駕籠に乗って少し経った頃。
今回のレースのせいで
多少交通規制がされており、
最短距離では移動できないと知った沖田隊長が
『大丈夫でィ。人を避けて走ればイケる』
と、交通規制を踏み倒して乗り込んで数十分。
俺達の乗った駕籠は
よく分からないリーゼントの少年を轢いて
しまったようで。
「と、とりあえず、救急車!」
慌てて携帯を取り出そうとすると、
沖田隊長が俺の携帯を手から奪った。
「ちっと待ちなせえ。」
「何するんですか…!」
ぐぬぬ、と睨んでみるものの、
沖田隊長は俺には見向きもせずに
窓を開ける。
「……………………。」
外の様子をキョロキョロと伺う沖田隊長。
もしかして、自力で少年を
助けるつもりなのか!?
破水しちゃった通りすがりの女をタクシーに
乗せて助けるような感じで!!
「………た、いちょ…う……」
な、なんて良い奴なんだ!!
俺、沖田隊長はただの隠し撮り
ドS野郎だと思ってたけど
そのただの隠し撮りドS野郎に
そんないい所があったなんて!!
早くただの隠し撮りドS野郎に
近くの病院を教えて、
タクシーの運転手さんと一緒に
病院に向かわなきゃ!!
「運転手さん、行き先変更しましょう。
行き先は………」
「あ、なんか大丈夫みたいなんで
出しちゃっていいです。
行き先は大江戸テレビで。」
「ああ、はいはい。大江戸テレビね。」
「…………へ?いや、ちょっ………」
俺の考えも虚しく、
俺達を乗せたタクシーはそのまま出発した。
少年が轢かれた交差点が
どんどん遠くなっていく。