第19章 トッシー編(原作沿い)
駕籠は江戸の道を走る。
ビルが乱立し、遠くにターミナルが
見えるこの街は、やはり都会だ。
「……江戸はビルが多いですね……。」
ぼんやりとそう呟くと、
隣に座る沖田隊長がはぁ?と首を傾げる。
「…今更何言ってんでぃ。
毎日通ってるだろィ?」
「……ま、そうなんですけど。」
はは、と笑ってみせるが、
沖田隊長は意味が分からないと
言った様子で首を傾げた。
「………あ。」
隣ではオタク達が我先にと走り込んでいる。
自分が手を回したとはいえ、
汗かヨダレか鼻水かもわからないくらいに
全身から液体を垂れ流して
全力で走っている彼らとは
友達になれそうにない。
「……江戸はオタクも多いですよね……。」
「…それは、ごく一部の人間なだけでさァ。」
俺がそう呟くと、
沖田隊長が嫌そうにこちらに顔を向けた。
窓の外ばかり眺めている俺が
気に食わないらしい。
オタク達を目で追っていると、
紛れて黒髪がふわりと舞うのが見えた。
あ、あれ、副長かな。
副長をぼんやりと見ていると、
肩をグイッと掴まれて、
窓から引き剥がされた。
「…………!?」
ぐるり、と車内に体を向けられる。
自然と沖田隊長に顔を向ける形になり、
ぱちりと目が合った。
沖田隊長の綺麗なまんまるの瞳に
あっけらかんとした様子の俺が写っている。
「………俺より土方がいいんですかィ?」
「………は?」
言っている意味が分からず、
首を傾げると、沖田隊長の眉間のシワは
ぐんぐんと深くなる。
「………………ムカつく顔しやがって。」
沖田隊長が俺を睨んでそう囁く。
それは、俺を見ているというよりも、
俺の奥の何かを見透かされているような
そんな視線。
「…………元から、こういう顔ですけど……。」
俺は訳も分からずまた首を傾げて言うが
火に油を注いでしまったようで、
沖田隊長はすっかり不機嫌になり
俺を睨んだまましばらく肩に置いた手を
離してくれなかった。