第19章 トッシー編(原作沿い)
「……ありがとう、澪。
…あのさ、オタクの事について
聞きたいんだけど……」
「へ?あ、あぁ………オタクって、
アニメオタクとか、アイドルオタクの?」
「そうそう。」
退はオタクの事を聞きたいらしい。
アニメのオタクの事だったら
毎週こっそりジャンプを
回し読みしている退の方が
詳しいと思うんだけどなぁ。
「あのさ……。
なんか、オタクの勲章……みたいなのって
ないかな。自分がオタクだぞって
証明できるような……。」
「オタクの勲章ねぇ…………。」
顎に手を当てて考え込んで頭を捻らせる。
そういえば、ここ最近
物凄くアイドルオタクだなぁと思う友人が
いたようないないような………。
だれだっけ。ええっと………。
「………うーーーん…………」
「…………オイ。」
考えていると、ドスの効いた低い声が
俺の耳に囁くように届いた。
「山崎。準備出来たなら早くしろ。」
「あ!!す、すいません!!」
振り向くと私服の副長が立っていた。
タバコをふかせていて、
煙草の煙が鼻を掠める。
「………あれ、副長も私服……。
これからお出かけですか?」
「……………まぁ、な。」
副長はあまり機嫌が良くないらしい。
退を瞳孔の開いた目でギロリと睨み、
その目をスライドさせて、隣にいた
俺の顔も写した。
鬼の副長と呼ばれる所以の蛇睨みに
一瞬だけ、背筋が凍る。
「あ、そうだ。副長。
例の件、澪にも手伝ってもらったら
どうですか?澪も知ってる人
多いかもしれないですし……」
「…………例の件って、さっきの?」
「うん。さっきのオタクの……」
退が先程の話を出そうとすると、
副長が退の話を遮った。
「………うるせぇ。」
「……へ?副長?」
「………澪。
テメェは近藤さんの仕事手伝ってりゃあいい。
それにもう勤務時間過ぎてんだろ。
さっさと坊ちゃんの家に帰れ。
……山崎、行くぞ。」
「へ、へい!!」
副長が俺の脇を通りスタスタと歩いていき、
退が慌ててそれを追った。