第19章 トッシー編(原作沿い)
「うぅ………も……飲めな…………い…」
新八が帰ってから、数時間後。
澪はまたカウンターに突っ伏した。
顔をのぞき込むと
目を閉じて寝息を立てている。
「………ついに寝ちまったかい。」
「ババアが強い酒ばっか飲ませるからだろ。」
「悪いねぇ。馬鹿みたいに真面目だから
虐めたくなっちまってね。」
「…コイツを玩具にすんじゃねーよ
クソババア。」
煙草を片手にババアは澪を
優しそうな目で見つめている。
ケッ、ババアの奴。なんか腹立つ。
神楽も少し前に家に帰らせたし、
澪も寝ちまったし、
そろそろ帰るか。
最後のテキーラを一杯、ごくりと飲み干した。
「…うぅ………んん…………むにゃ………」
澪が呻いて、首の向きを変えて、
こちらを向いて寝始めた。
澪の髪に手を通すと、
するすると俺の指の間から髪が落ちていった。
ストレートのサラサラヘアーなのが
ちょっとムカつく。
「ん……むぅ………。」
澪は擽ったそうに
体をよじる。
「…………くすぐっ……たい…………」
澪がふにゃりと笑った。
そのまま頭を撫でてやれば
澪はそのまま、また眠りに付く。
今、この店には俺達以外の客はいなくて
たまとキャサリンも裏の片付けに
行っていていた。
この部屋には俺達とババアしかいない。
「ぎん……ときのて、
……あったかい………んん、」
「……………………。」
一瞬、世界が止まる。
俺の夢でも見ているのか、なんて淡い期待と
実は起きてるんじゃないかという不安が
過ぎる。
別に起きていてもどうもしないんだが、
いかんせん心臓が煩い。
起こしてしまうのではとバクバクしている。
それを見て、ババアがにやりと笑った。
「アンタ、コイツに惚れてんのかい。」
「ばっ!………ちげーし。」
「焦って否定しても無駄だよ。
何年生きてると思ってんだい。」
「………………。」
ババアは引っ込んでろよ。
俺は今さっきまで、甘い恋に浸ってたの。
返せよ俺の青春。