第18章 柳生九兵衛生誕祭編(原作沿い)
「…、おめでとう!」
「九兵衛さんおめでとう!」
参加者達が次々と花束を持ってくる。
そうだ、次はテーブルの代表者が
花束を持っていくんだったな。
「あッ……ありがとう。」
「ありがとう。」
若の手はすぐに花で埋まっていく。
花形の女性に紛れて、
政界の男達も花束を持ってくる。
「やぁ、おめでとう九兵衛さんや。」
男は若に近づき、
若の持っている花束の隙間に
持っていた花束を入れる。
「あ、その……ありがとう。」
若がふわりと笑いかけると、
その男が手を差し出した。
「今後とも、ウチと宜しく頼みますぞ。」
「……あ……あぁ。」
男の手を見て若が苦笑いした。
男は若との握手を求めている。
だが、今若が男性に触れてはマズい。
こんな現場で政界の大御所を投げ飛ばしたら
花どころか、この生誕祭も柳生家も、
何もかも台無しだ。
「……失礼します。」
俺が若の隣に寄る。
「なんだね?君は。」
「私は柳生九兵衛の護衛でございます。
失礼ですが、周りから逸脱した行為は
控えて頂けますか。」
男は眉間にシワを寄せた。
周りの奴らには気づかれていないらしい。
3人で談笑しているようにも見えるのだろう。
「握手ぐらい構わんだろうが。
ワシを誰だと思っておる。」
「ええ、存じ上げております。」
男の問いにそう答えると、
男は満足そうに笑った。
「…ならば、」
「ーー最近また懲りずに
不倫を始めたそうですね。」
男の手が止まる。
そのまま俺も男のように、にやりと笑った。
「お相手は……吉原の女だとか。」
「………っ!」
「……そのお顔。事実と
判断してよろしいですか?
……今日は奥様といらっしゃったと
お聞きしましたが。
この事は知っておられるのでしょうか?」
「………クソッ!!」
男が俺を睨んでテーブルに戻っていく。
若がホッとため息をついた。
「ありがとう、澪。助かったよ。」
「……若を手助けするのが俺の役目だから
気にしないで。」
若に笑いかける。若も安心したように笑った。