第17章 呼び名編
(土方視点)
後日。平日の昼間のこと。
「オイ総悟。何昼寝かましてんだ。」
総悟は道場の縁側の柱にもたれかかり、
アイマスクをつけて寝ている。
昼間っから何やってんだコイツは。
俺はテメェの始末書に追われてるっつーのに…
「…………オイ聞いてんのか。」
「…ぐー…ぐー…」
俺が声をかけてみるものの、総悟は起きない。
いや前みたいにわざと寝てるだけかも
しれねぇけど。いやそれもそれで腹立つな。
「…失礼します。お話中でしたか?」
後ろから声をかけられて振り返る。
神崎が書類を持って道場の裏から
顔を出していた。
「…いや、起こしてただけだ。
こんなとこで昼寝してる馬鹿をな。」
刀の鞘で総悟の頭をつつく。
神崎は呆れたようにため息をついた。
「はぁ……またですか。」
すると、総悟がアイマスクを上げる。
コイツやっぱり起きてやがった…。
「……また、じゃねーだろィ?
一応午前中は仕事頑張りやしたぜ。」
「…午後も…というか、毎日
頑張ってください。」
神崎が冷たく見下す視線で総悟を見る。
総悟はそれにも懲りずに大きな欠伸をした。
「ふぁあ……あ、そういやあ、
なんか用ですかィ。」
総悟の言葉に本来の目的を
思い出した神崎の眉がぴくりと動く。
「…そうだ、総悟。この書類なんですけど。」
「あり?なんか違ってやした?」
「ええ。…寝ながら書いたでしょう?
誤字脱字だらけでしたよ。
間違っている所付箋貼ったので、
書き直してください。」
「ちぇっ…手厳しいねェ澪は。」
「言っておきますが、普通です。
総悟がおかしいんですよ。」
ん?今なんつった………『総悟』……?
「珍しいな。お前が総悟って呼ぶなんて…。」
いつもは沖田隊長って呼ぶくせに。
珍しいというか違和感がある。
俺が呟くと、神崎の顔が曇る。
「こ…これは…その。この人がですね…」
「俺と澪は友達になったんでさァ。」
澪の言葉を遮り、
総悟が立ち上がってにやりと笑う。
挙げ句の果て神崎を引き寄せて
肩を組んだ。