第16章 ドライバー編(原作沿い)
「神崎局長、ハンコお願いします。」
「ああ、そこに置いといて。」
「局長ー、今度の攘夷志士一斉摘発の件
なんですが。」
「ん?…何か案でも浮かんだ?」
「神崎さん。ここ、
なんて記入すればいいですか?」
「ああ、そこはね………。」
新しい体制になって1週間
飛ぶように時間が過ぎたが、
特に異常もなく、皆それぞれ
新体制で頑張ってくれている。
それに、俺があまりサボり癖がないからか、
他の隊士もサボる事がなくなりつつあり、
皆誠実に職務をこなしているという。
………というのは、斉藤隊長情報だ。
俺が書類で外に出られない分、
斉藤隊長に、一時間以上サボった者は
即粛清してもらっている。
粛清する人数が減るのは有難い事だな。
「退、その書類終わったら休憩していいよ。」
「澪は?」
「俺はもう少しやるよ。」
カリカリとペンを進める。
新体制で、仕事を少し分散させたため、
大分一人でも回せるようになった。
ただ、皆初めてやる仕事ばかりなので
分からなかったり、聞いてきたりすることも
多いが、その分他の隊士のためになるならば
それでもいいと思う。
書類の最後に自分のハンコを押す。
ふう、と一息つくと、
隊士が入ってくる。
「…し、失礼します。」
「どうしたの?」
「…じ、実は、桂小太郎が
神崎局長に話がある…と。」
「……………分かった。今行く。」
話の内容は大抵想像がつくけど…。
ドライバー姿の彼を思い出すと
呆れてため息が出た。
「…で、桂の調子はどうなの?」
「それが…ドライバーが邪魔して
ろくに取り調べもできず、
ただ縛り付けている状況です。
しかし、これ以上人員を割くわけには…」
「…確かに。」
たしかに、小太郎を縛っておいておくとしても
脱獄されるのは時間の問題だな。
相手は逃げの小太郎。俺的には
この一週間逃げなかったことだけでも
意外過ぎる結果だ。
「局長…ご武運を!」
「うん。ありがとう。」
小太郎の牢獄の扉が後ろで
ガチャリと閉められる。
中は薄暗く、外の光もほとんど差し込まない。
ここは、俺と小太郎だけしかいない。
そしてここの話も誰にも聞こえない。