第12章 喧嘩編

「…………………澪。
お前を怒らせるつもりはなかった。
俺は俺に出来ることをしていただけだ。」


「………………じゃあ、本当なの？」


「そうだ。…元々俺と高杉は敵対関係にある。刺客を何人斬った所で何も変わらない。」

「……………………。」


敵対関係…そうだ。俺達は晋助とはもう
友達と呼べる関係では
なくなっていたんだった。

その事実が少しだけ俺の胸にチクリと刺さる。

「…だから、この傷だって関係ない。
俺が高杉の刺客に勝手に
刀を向けただけの話だ。」


「………………。」




「澪…。信じてくれ。
お前のためにやっていた事なんだ。」


「だったら………」


「……………？」


「だったら…なんで言ってくれなかったの？」


ああ、こんな所でまた泣いてしまうなんて
俺は全然かっこよくない。


本当は罵倒しに来たんだ。
ふざけるな、俺はもう子どもじゃないから
自分のケツは自分で拭けるって。

もう俺は大人なんだから口出しするなって…。


「何が信じてくれだよ…、ぐすっ
その前に俺の事少しは信用してくれても
いいじゃんか………。」


「…………俺は、そんなつもりじゃ……」


「だってそうだろ？俺が晋助の刺客なんかに
殺されそうなただの餓鬼に見えたんだろ！？」

「そこまで言ってないだろう。
少し落ち着け、澪。」


あくまで冷静に対処する小太郎に
だんだん怒りが溢れて来る。


「落ち着いてられるか！馬鹿！」


「馬鹿じゃない桂だ。」


「うるさい！」


「うるさくない桂だ。」


「もう小太郎なんか嫌い！！」


「嫌いじゃない桂だ…………って、
おい！何処へ行く！！」




気付いたら小太郎の家を飛び出していた。



もう知るもんか。小太郎なんか大嫌いだ。


俺はゴシゴシと涙を拭いて、
江戸の街を走り抜けた。