第11章 真選組動乱編(原作沿い)
(伊東視点)
「やりましたね。伊東さん。」
「ああ、案外簡単だったよ…。」
篠原君が倒れた彼の手足を縛り
仰向けに寝かす。
割れた湯のみの上に倒れたからか
神崎君の右頬には切り傷が出来、
仰向けにしたことで
紅い血が頬を伝った。
神崎君は縛られていることも
知らずに眠っている。
「………フン、こんなどこにでもあるような
普通の顔の男に、高杉があそこまで
執着する理由が僕には分からないよ。」
僕がそう篠原君に言うと、
後ろからシャカシャカと音楽が鳴る。
「奴は顔じゃない。俺は奴の心に惚れた。」
「万斉殿…。」
「晋助が前、そう言っていたが、
…………本当に普通の顔でござるな。」
僕達伊東派の他の隊士も集まり、
神崎君を持ち上げる。
「彼を高杉に引き渡す前に
一つ仕事をしてもらおう。」
「…彼を船に乗せないのですか?」
「ああ。彼はいわゆる保険だ。
もしも沖田君が裏切り、近藤と多くの隊員が
僕達を取り囲んだ時…彼を使えばいい。
彼は柳生家の元隠密。しかも
次期当主柳生九兵衛の友人だ。
真選組に入り攘夷志士によって死んだとなれば
真選組の顔は丸つぶれとなる。
彼は人質として使えるのだよ。
我々と一緒に列車に乗せるとしよう。」
僕がそういうと、彼らは大きな麻袋に
神崎君を入れ、運んでいった。
これでよし。準備は万端だ。
あとは……………
「………………!」
後ろで覗き見をしている山崎君を始末すれば
それで終わりだ。