第11章 真選組動乱編(原作沿い)
その夜。
「……………澪です。」
コンコン、と局長の部屋をノックすると
部屋から『入れ』と声が聞こえる。
「失礼します。」
昼間の会議の後、夜にこっそり来てくれと
局長に言われた俺は、
誰にも見られないように天井から忍び込み
局長の部屋に入った。
「悪いな、澪君。
こんな夜に呼び出してしまって…。」
「いえ…。」
俺が首を振ると局長は真剣な顔をした。
「折り入って大事な話があるんだ。
…………トシの事だ。」
「………………。」
やはり、副長の事か。
局長の瞳が言うまいか迷ったように泳いでいる
「これは口外しないで欲しいんだが、
奴は無期限の謹慎処分になった。」
「……………。」
なんだ。切腹処分になったから
副長を連れて国外へ逃げてくれ、とかだったら
どうしようかと思った。
「………驚かねぇんだな。大した肝っ玉だ。」
「………失礼ですが、
副長の処分はもっと重いものかと
思っていたので。」
「まぁ………な。俺が止めたから。
本当は切腹処分だった。」
ニヤリと笑う局長にこそ肝っ玉感じる。
目の前に副長がいるのに切腹処分とか
死んでも出来ない。
「…それで、用とは?」
「ああ…。そのトシの謹慎処分に
ついてなんだがな…。
最近のトシの噂は知ってるか?」
「はい。存じております。」
「トシは…謹慎処分とはいえ、
真選組の副長だ。
外に出りゃあチンピラや攘夷志士に
絡まれることもあるだろう。
だが、その一方でチンピラに土下座した
っていう噂もある。
いつものトシだったら
そんなもん蹴散らしていたさ。だが…
もし今のトシの首に刀がいけば
殺られるのは一瞬かもしれん。
だから………」
「俺が副長を護ってくれ。そういう事ですか」
俺が局長の言葉を代弁すると
局長は思い切り頭を下げた。
「…頼む。これは真選組局長としてじゃない。
トシの…土方十四郎の友人としての頼みだ。」
「……………局長…なんで俺なんですか?」
他の密偵もたくさんいたはずだ。
例えば…退とか。
「密偵の中では君が一番腕が立つ。
トシが土下座しようと何しようと
君ならトシを任せられる。」
「……………確かに、そうですけど。」