第10章 風邪編
(桂視点)
その刀は澪との昔の思い出を蘇らせる。
楽しかったことも、辛いことも……。
それはきっと受け取った澪も同じだ。
澪のいつも言っていた言葉を思い出す。
『この刀と一緒に寝ると、
先生と添い寝してくれているみたいで、
落ち着くんだ。』
『この刀は先生に買ってもらった大切な物だから。』
「澪は…あの時の事を…まだ………」
俺が言葉を紡ぐと、銀時が遮った。
「澪は…ちゃんと前を向いてる。」
「そうでなきゃ、
俺を恨んで殺しに来てただろうよ。」
嫌に納得してしまう銀時の言葉を
無理矢理飲み込む。
「…そうだな。」
だからこそ、先生が俺達に託した澪を、
俺達を受け入れてくれた澪を、
護る価値があるのだ。
お前もそうだろう?…銀時。
「じゃーな、ヅラ。邪魔したぜ。」
銀時は振り向きもせずに
澪と刀を抱えて出ていった。