第10章 風邪編
(桂視点)
「たのもぉおーーう!!」
エリザベスとお茶を飲んでいると、
突然の大声が玄関から聞こえる。
「…何事だ?」
というか…一体誰だろうか。
聞き覚えがある声だが。
「…何者だ!
ここが何処か分かってんのか!」
「え?こたろーのいえ。」
「桂さんの事知ってるのか…?」
「いや、部外者を通すわけには…!」
門番の者との言い合いが自室まで
響いてきた。
「お前ら…静かにしろ。」
玄関に俺が出ていくと、
門番が道を開けた。
「か、桂さん!!」
そしてその先には、客人がいた。
「あ、こたろーだ。」
「澪…?」
聞き覚えのある声は澪の声だった。
とりあえず澪を2階の自室に案内した。
茶はいらないことをエリザベスに伝え、
ふたりきりになる。
「澪、何の用だ。
怪しまれても知らんぞ。」
「だいじょーぶ。みられてないから!」
にこっと笑う澪の顔は紅い。
火照っているようにも見える。
「…大丈夫か?何だか、
フラフラしているようだが。」
「へーきだよ。ちょっとぼーっとするだけ。」
そう言うものの、意識が定まっていないようで
ふらふらと俺の胸に倒れ込んだ。
「澪…?大丈夫か。」
「だからだいじょーぶだってー。」
そういうものの、澪は力なく
俺に寄りかかったままだ。
額に手を当てると、物凄く熱かった。
「澪、熱あるんじゃないか?」
「ないよ。おれ、ばかだもん!
ばかは、かぜひかないんだぞー。」
笑いながらむにゃむにゃと
口を動かす澪に笑いがこみ上げる。
「フッ…阿呆。澪は馬鹿じゃない。
俺の大事な友人をコケにしたら
許さんぞ。」
「………ほんと?」
澪の目はうつろになっていく。
俺は力が抜けていく澪の体を抱きしめた。
「あぁ…………本当だ。
澪は馬鹿なんかじゃない。
とっても……いい子だ。」
「へへ……………、そっ…………か……………。」
澪の目がゆっくり閉じていき、
少ししてすぅすぅと寝息を立てる。
「ふぅ……寝に来たのか?貴様は。」
自分の胸の中で心地よさそうに
眠りにつく澪を愛おしく感じた。