第2章 柳生編(原作沿い)
「あら、澪さんも大変なんですね。」
「ゲッ…なんで知って…」
「口に出てましたよ。」
妙様にクスクスと笑われる。
しまった。愚痴を口に出してしまったようだ。
「聞かなかったことにしてほしい。」
俺が頭を下げてそう言うと、妙様はまた笑った
「何言ってるんですか。
澪さんとちゃんと話せた気がするのに。」
「…忍とは、そういうもの。」
妙様の言う『話す』はおそらく
普通に世間話をしたり、お互いの事聞いたり
することだろう。
でも、そう言う事は俺には必要ない。
それはお暇をもらったときにでも
していればいい。
今は仕事中。意識を張っていなければ
皆に迷惑をかける。
「でも、澪さんも本心を
持ってて安心した。」
「……………」
ふわり、と風が流れる。
俺から振り返って笑う彼女の髪が揺れた。
その姿がなんだか綺麗で、悔しい。
「なら、妙様はどうなの?」
「えっ…」
「若の嫁になるのが本心なのかな?」
彼女の瞳がぐらりと揺れる。
やっぱり、いくら若でも、
2日で嫁を連れてくるのは早すぎると思った。
この女、何かある。
「は…い。」
唇を震わしながらそういう妙様は
俺からすぐに目を逸らした。
嘘だ、な。
いくら鈍感な俺でも、というか、
世界中の男が見ても分かるような嘘だった。
だが、俺は見て見ぬふりをした。
若は彼女との結婚を望んでいるのだから。
「…そうか。もし妙様が
ここでやめるって言ったら
こっそり追い出しちゃおうかなと
思ったんだけど…」
後ろから、ドタドタドタと
男の足音が聞こえて来る。
これは柳生家の者の足音ではない。
「…じゃあな、妙様。
また何かあったらいつでも」
これは恐らく侵入者の者だ。
情報に来ている怪我人達の足音とは
考えづらい。
ということは、残りの銀時かもしくは、
妙様の弟、『志村新八』か。
「澪さ……」
どちらにせよ、俺に出る幕はない。
妙様が何か言おうとしたが、
ふわり、と屋根に飛び乗って消える。
すると間もなく、障子が開き、
"姉上"と声が聞こえた。
「志村新八…か。」
さて、物語は終盤だ。
「はぁ、暇だなぁ。」
俺はまた、屋根の上で愚痴をこぼすのだった。