第1章 境界上にて邂逅す
――瞬間、炸裂音。
あらゆる音が遠ざかる。……いやむしろ、消えた。
おかしい。
高速で水面に叩き付けられたはずなのに、どこも痛くない。
これから痛くなるのだろうか……考えるのは嫌だが、もしや痛みを感じている場合じゃ無いってことだろうか。
流れる水中の筈なのに、特有の耳障りな噪音も無い。耳に水が入ったわけでも無い。
天地も判らないこの状況で……目を、開いていることに気付いた。
瞬きは……出来ない。
だが目を開いていても閉じていても、見ている風景に変わりは無かったろう。
黒。暗い。
周囲の色は急激に濃さを増していく。これ以上に暗くなりえないというところにまで。
藍、紺、鈍色。
静かな色の流れ。
極限の黒。
――疑わしい。
他の色から黒を生み出しても、それは本当の黒なのだろうか。光の反射の有無だけが?
否。成り得ない。
黒、真の漆黒。
あらゆる光の無い、波動の無い、揺らぎの無い、完全なる統一色。
これならば、いい。露わでは無い。安心できる。
ここには境界が無い。色も識別出来ない世界で全ては一つだった。