第19章 加速する輪舞曲
『お母さん!ちょっと許可が欲しいんだけど…』
「何?」
合宿をすると聞いた日。いつもは家に居ない母が運良く家に居てくれたから合宿参加の許可を得る為に話を持ちかける。
『七日から二泊三日の合宿に参加したいんだけど…』
「………いいんじゃない?」
『え?』
あっさりと出た承諾の言葉を得てマヌケた声が出る。
「たまには楽しんでくれば?」
『え?本気?』
「娘の青春を邪魔するほど野暮な事はしないわよ」
『あ…そう…』
その言葉に安堵したアタシが馬鹿だったと思うのは数日後。
※※※
合宿当日。
始めは学校の校門前で集合しようって話だったけど、どうやら智桜姫には色々と事情がありそうで集合時間も早朝だし学校から一番遠いから大変だろうと皆で話し合った結果、智桜姫の最寄り駅に集合になった訳だが。
まだ集合時刻の10分前なのだが智桜姫以外は揃ってる。あのお寝坊な赤也ですら15分前には到着した。
「珍しいなー姫がまだ来てないとか」
「そうだな…基本は30分前行動なタイプだとデータでは出てるんだが…」
各々が不安そうにしていると子供の泣き声が聞こえてくる。
「やだーいっちゃやだー!」
「ねぇねいかないでー!」
一同「………」
『ごめ…お待、せ………』
今にも倒れそうな程、息を切らせてやって来たのは智桜姫でその足腰には小さな子供が引っ付いている。顔もぐしゃぐしゃにしながら泣いて離れそうに無い。ドサッと荷物を地面に置くと携帯を取り出して何処かに電話をかける。
『ちょ…まだ、すか…え?いや、遅いから駅…あ、ちょっと!』
無理矢理電話が切れたのか苛立った表情で携帯を制服のポケットに仕舞う。
『皆ごめ…後数分待っ、下さい…』
※※※
それからものの2~3分。駅前で送迎のバスを待つ俺達の前に止まった大きいファミリーカーから出て来たのはとても綺麗な女の人だった。その女性は俺達を見て軽く会釈をしたら泣き喚きながら智桜姫にしがみつく子供達を真顔で強引に引き剥がす。
「「うあーん!」」
「アンタもう少し早く連絡出来んと?」
『御免なさい…一応承諾は得たんやけどまさか帰って来んとは思わんかったと…』
「またかね…」