第16章 飛び交う交声曲
嬉嬉として両手を上に掲げて飛び跳ねる赤也に全員が安堵する。智桜姫に至っては褒美として手作りのプリンを取り出し皆に配っていく。珍しく焼菓子では無いのが少し意表を突かれた。
「やったー!プリン!」
「美味そー!」
『晴れて今日から皆で部活再開!厳しい練習になるだろうからしっかり糖分とらなきゃね!』
と明るい笑顔を向ける智桜姫を見て心臓が少し苦しくなる。成程…皆が………精市が惹かれるのも少し分かる気がする。
※※※
『って感じで見事赤点は免れましたー!』
「そうか。良かったよ」
いつもより少し高めのテンションで話す智桜姫は嬉しそうに鞄から小さめの箱を取り出す。
『はい』
「これは?」
『切原君が赤点を免れたお祝いしよ!』
屈託のない笑顔で箱を開けると、その中にはプリンが一つ。
「わざわざ買ってきてくれたのかい?」
『ううん、一応手作り』
手作り?いつも手作りのお菓子は焼菓子ばかりだったのにプリンだなんて凄く珍しい。じゃなくてこの完成度は流石だと思う。
『昨日の夜作って今日学校に持って行って家庭科室の冷蔵庫借りて保管してもらって、さっき皆にも配って来たところ!』
前日から用意してたって事はもう、赤也が赤点を取らないと確信していたのだろうか。
「もし赤也が赤点取ってたら?」
『んー、その時は残念賞かな』
冗談混じりに笑う智桜姫を横目にスプーンで掬ったプリンを口に持って行く。スーパーで売ってるようなプルプルしたプリンでは無くケーキ屋で売ってるような滑らかなプリン。
「ん、凄く美味しいよ」
『ホント?良かった』
「ほら、食べてみて」
『っ!?』
安心した様に笑う智桜姫の口にスプーンで掬ったプリンを持って行くと少し視線を泳がせて恥ずかしそうに小さな口を開ける。
「ね?」
『………まぁ…良く出来た方、かな…』
もごもごと口篭る彼女の頬はほんのり色味を帯びていて。可愛いなぁって見つめていると視線に気付いた智桜姫と目が合う。怪訝そうに眉根を寄せる智桜姫から視線を外してまた一口、プリンを口に運ぶ。さっきよりも甘みがある気がした。
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