第15章 止まらない芸術歌曲
そう言う幸村君は何故かとっても楽しそうで。
『すみません…本当にすみません…』
「何でそんなに謝るんだい?」
『だって芋虫如きで気を失って…ベットまで借りちゃったし…』
「ものの10分くらいだよ。それに俺は得した気分だし」
その言葉の意味が分から無くて知りたくて幸村君を見ていると、おでこに乗せられた手が視界を遮る。
『え!?え!?っ!?』
唇の端が何かを掠めた………気がしたけどすぐ視界が開かれる。
「あまりそうゆう顔はしない方がいい。狼に食べられるよ」
※※※
智桜姫の甘い香りが残るベットに身を沈める。驚く程気持ちが落ち着く。だけどさっきまで智桜姫がこのベットで寝ていたと思うと…あの熱を帯びた瞳と無防備な顔を思い出すと。
「はぁー……………」
自分がとんだ狼だと思い知らされる。
「思った以上に………柔らかかった」
ベットまで運ぼうと抱えた時に偶然触れてしまった右手を見つめる。あんなに小さくて細いのに女性の象徴はそれなりにあった。失礼な話、小学生みたいに小柄だから、無いものだと思っていた。
「はぁ…」
あの寝顔なんか天使以外の何でもない。髪を梳くと緩められる頬。身体が勝手に動いてしまったけど理性で頬に留めておいた。
「駄目だなぁ…」
俺を映す陰りの無い真っ直ぐで綺麗な目は少し熱を帯びていた。誘ってる以外の何でもない。意地悪したくて…でも困らせたくは無くて。唇の端を掠めるのが精一杯の意地悪のつもりだったけど視界も覆ったし本人は恐らく分かってない。
「俺…保てるかな…」
どんどん溺れて行く。抗いようが無いほどに。
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