第15章 止まらない芸術歌曲
"【恋】してるんだよ"
親友の言葉がひたすら頭の中で繰り返される。
でも幸村君を見たり少し触れられたりすると動悸が…心臓が苦しくなるのも、ふと考えるのは幸村君の事だと言うのも、会いたいと思うのも………
"だって気付いたら好きになってるんだよ?どうしようも無いよね"
彼のその言葉は好きな人が居る、と言うのを確信付けるもので心が傷んだのも…恋、してたからなんだ。
あぁ幸村君に恋してるんだと思うと苦しかったものが少しだけ楽になって、じんわりと胸の奥が熱くなる。
『何か…変な感じ』
だけど決して不快では無い。寧ろ少し心地良い。
『でも…』
この気持ちは胸に秘めておこう。きっと邪魔になってしまう。大丈夫、自分の気持ちや感情を押し殺す事なんて慣れてる。
※※※
「さて問題だ赤也」
「うす!柳先輩!」
放課後の部室。梅雨時期だが今日は晴れてるので外で思いっきり部活が楽しめる………らしいけどアタシは暑いのは苦手。
「もう時期行われるのは?」
「関東大会っす!全員潰すっす!」
「たわけっ!!!」
一同「!?」
キーンと真田君の怒声が部室に響き渡る。それはもう鼓膜が破れるんじゃないかってくらいの大きな声で。
「不正解だ赤也」
「えーっ!?」
『期末テストだよ切原君』
「………え?」
7月中旬に差し掛かる微妙な日程で行われる関東大会。しかしその前に7月に入った瞬間に期末テストがある。しかも期末テストはもし赤点を取ってしまえば追試はすぐではなく一週間後…関東大会と被るし、勿論追試が終わるまで部活も禁止。赤点を取ってしまえば練習どころか参加すらも危うくなってしまうのである。
「俺…そんなの初耳っす………」
「大変じゃのぅ…赤点を取ったら練習は愚か試合にすら出れないのぅ…全国大会も危ういかも知れんな」
「んな!?」
「そーだなぁ危ねぇなぁ」
「ひいぃぃい…姫先輩ぃい…」
仁王君と丸井君にからかわれて涙目になりながらアタシに縋り付いてくる切原君の頭を撫でてやる。仔犬みたいだ。
『もう、二人共からかわないの!』
「切原君、いつも桜音さんに助けてもらうのは良くないですよ」
「だってぇ…」
『まぁまぁ…でも確かに関東大会には出られなくなるよ』