第12章 隠れた受難曲
「噂で名前が知れ渡るって…結構強かったんじゃないのかい?」
「小学生から全国の常連だ。去年の夏は名を聞かなかったが…大会を辞退したと言う噂があった」
「帽子のお兄さん詳しいんですね」
「む?まぁ…そうだな」
「皆が仲良かったらあんな事にはならなかったのに…」
そう言う夏葉ちゃんは今にも泣きそうで。聞きたい事は沢山あったけど何も言えなくなってしまった。
「ちょっとお兄ちゃん!夏葉泣きそう…何とかして」
って言われても。皆と顔を見合わせるとけど流石に泣きそうな子を笑わせる術は持ってないみたいで。
「そうだ、夏葉ちゃん。君の好きなものは?」
「すきなもの…?お姉ちゃん」
「どんなところが好きなのかな?」
「全部。怒ったら怖い所も、お母さんよりお母さんみたいなところも!全部!」
お母さんより…お母さん?
「美味しいご飯作ってくれるの!今日の夕飯何かなぁ」
-わいわい-
そして今度はタイミング悪く戻ってくる。
※※※
『じゃあアタシ達はそろそろ帰るよ』
ひとしきり雑談が一段落したところで智桜姫は控え目に告げる。
「では我々もそろそろ帰宅するとしよう」
「そうだな。長居するのも悪いだろう」
「じゃあ私もお家帰る!」
「そうだね。母さんが心配するよ」
『だったらアタシが送って行くよ。親御さんにも説明しとく』
そう申し出るとやっぱり聖菜は顔を真っ赤にして…今度は俺の後ろに隠れなかった。
「そこまでしてもらうなんて悪いよ」
「女性だけだと危ないのでは…」
『平気平気。ここまで来るって事は家はそんなに遠くないんでしょ?任せといて』
鞄を肩にかけると夏葉ちゃんと手を繋ぐ。そして空いてる手を聖菜に差し出す。
『行こっか?』
「~っ!はいっ!」
一同(お姉ちゃんだ…!めっちゃお姉ちゃん!)
聖菜が少し羨ましく感じた。
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