第2章 運命の助奏
ふあ、と出そうになる欠伸を噛み殺して下駄箱を開けると、いつもの様にバサッと数通の手紙が落ちる。
『おっはよーダーリン!って…また手紙?』
『うん、そうみたい』
『今度は何処の誰よ』
抱き着いてきた腕に力を込めて肩口から覗き込む。
『1年…後輩の女の子、みたい』
「相変わらず女子モテ凄いなぁ…羨ましいでホンマ」
『おー、ゆーしおはー!』
「何言うてんねん。さっき朝練で会ったやろ」
『そうでした』
おちゃらけて言うとアタシのコートの裾を掴んだまま上履きに履き替える、この甘えたさんはアタシの一番の親友。小学校からずっと仲良くてずっと一緒。中学校に上がってからはカリスマ性抜群のテニス部のマネージャーをもぎ取り、今や立派に選手をサポートしている………けどやっぱり甘えたさんで可愛い女の子。
「姫さん、1ヶ月経ったけどどうや?神奈川からの通学しんどない?」
『ん、平気。ちょっと早く起きるだけだから』
「せやったらええねんけど…」
『もう!ゆーしのばかっ!』
「………すまん」
アタシは1ヶ月くらい前に神奈川に引っ越して、そこから電車通学をしている。勿論、親友である実亞加は事情とか知ってて…必然的に仲の良いテニス部も一部は知ってる。
『気にしてないから大丈夫』
「…ホンマ、気丈なやっちゃな」
『………うん、そうだね』
※※※
「あの…思ったんすけど!!!」
「どうしたんだい?」
朝練が終わって制服に着替えてると後輩のエースが神妙な面構えで俺の前に立ち塞がった。
「部長、最近いい事ありました?」
一同「!?」
「…どうしてそう思うんだい?」
「どうしてって…うーん………雰囲気が優しいってゆーか…あっ!違うんす!普段の部長はとっても優しいんすけど!!!やっぱ部活ん時はきっ………厳しい、じゃないっすか?でも最近の朝練の時は、ちょっとのミスも目を瞑ってくれてるってゆーか………」
身振り手振りを大きく落ち着きが無いくらい慌てて喋る後輩を見てると思わず笑ってしまう。
「ふふっ…」
「………え?」
「いや、何でもないよ」
意外と鋭いなーって思ってると何かを察した様に目を光らせる人物が2人。まぁ別に隠す程の事でもない。