第10章 叱咤の対舞曲
「って事があってさー…あ、その卵焼き美味そう!くれ!」
『へぇーって許可する前に取らないでよ』
「警戒心の強い子供だったなり。俺も貰うぜよ」
『あ、ちょっと!』
昼休み。放送委員のアタシは放送室で昼食を取っていたら、何処からか湧いてきた丸井君と仁王君も一緒に昼食を取ることになって他愛の無い話をする。
昨日、幸村君のお見舞いに行ったら妹さんが友達と一緒に来たみたいで、帰り送る時に友達の方は"一人で帰れます!知らない人に家を教えちゃダメだって言われてるので"と逃げてしまったらしい。
アタシ的にはしっかりした小学生だと思う。
「俺も小さい弟が居るから子供に好かれる自信はあったんだけどなー」
『まぁしっかりしてていいんじゃない?』
「姉ちゃんと妹と弟がいるんだと」
4人兄弟か…ウチ程じゃないけど多いな。しかしウチの子達はそこまでしっかりは…してないだろうな、うん。甘やかしちゃってるし。
「しかし何処で見たんかのぅ」
「そうなんだよなぁ誰かに似てる気がするんだけど分かんねぇんだよなぁ」
『まぁそーゆーもんなんじゃない?もしかしたらその子のお姉さんが立海生かもってくらいじゃないの?』
「「だよなぁ…」」
※※※
『じゃあ、お姉ちゃん行ってくるね』
「「「いってらっしゃーい」」」
日曜日。身支度を整えて下の子二人を連れて玄関に立つ。見送ってくれるのは中の子三人。
「お姉ちゃん」
『なあに?』
ふいに三女が申し訳なさそうに声をかける。目線を合わせる為に屈んで顔を覗き込むと気まずそうに顔を逸らす。
「今度…お友達、家に連れてきていい?」
『…!』
ウチは兄弟が多くて騒がしいし家も狭い。だから気にしているのかこんなにも躊躇っている。
『いいよ。そのお友達の好きなお菓子とか聞いといてね?作れるものは作るから』
「っ!有難うお姉ちゃん!」
「じゃあまなもー!」
「さっちゃんもー!」
『はいはい。じゃあちゃんとお部屋のお片付けはしようね?』
「「「はーい」」」
元気よく返事をする妹達の頭を撫でて家を出る。1ヶ月ちょっとぶりの東京は少し楽しみ。
※※※
『っ智桜姫ー!!!』
-ガバッ-
『実亞加!』