第9章 響く四重奏曲
『それにアタシ何か居なくても皆余裕でしょ?王者立海だもんね!』
一同「っ!」
と眩しい笑顔を向ける智桜姫は幸村と違った意味で恐ろしいと皆が思った事だろう。
「1ゲームも…いえ、1ポイントも取られず勝つっす、俺!」
『おー!期待してるよ』
「先輩達!聞きましたか!?姫先輩が俺に期待してるっす!」
ふむ…赤也の扱いも上手いと見た。
※※※
「…と言う感じだ」
部員達から報告を受けて小さく溜息を吐く。彼女にマネージャーを頼んで良かったと言う安心感と予想通り彼女は周りを魅了すると言う不安感。
「複雑そうじゃな。姫さんから報告は受けてないんか?」
「そんな事は無いよ。いつもしっかりと報告してくれてるさ」
彼女からすれば毎日ここに来るのは学校のプリントを届けたりとか、部活内容の報告だとか業務的な感覚なんだろうけど。
-コンコン-
ふいに病室の扉がノックされる。智桜姫は今日は来れないと言っていたし…親は午前中に来た。となると…誰だろう?
「お兄ちゃん、身体の具合どう?」
「聖菜!?」
「あ、皆さんお揃いだったんですね!こんにちわ!」
ひょっこりと顔をだしたのは妹だった。
「1人で来たのかい?駄目じゃないか」
「1人じゃないよ、お友達と一緒」
そう言うとまた扉の外から小さな頭が出て来る。
「夏葉ってゆーの!去年の冬から私の一番のお友達!」
「な…夏葉、です…」
鈴の音の様な可愛い声が響く。
「………どっかで見た事あるのぅ」
「あ、俺も思った」
「これ、私のお兄ちゃん!テニスがすっごく強いの!んで、お兄ちゃんのお友達!皆すっごくテニスが強いんだ!」
「テニス…」
「夏葉ね、凄いんだよ!」
一同「?」
「お姉ちゃんが2人居て妹が2人居て弟が1人居るんだって!」
へぇ…6人兄弟か…随分と多いんだな…
「あ!いけない!そろそろ帰らないとお母さんに怒られちゃう!行こ、夏葉」
「あ、うん」
「俺達が送ろう」
「すまない、助かるよ」
病室を出て行く皆を見送ってから、ふと考える。夏葉ちゃん…誰かに似てる気がするんだけど誰だったかな。
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