第5章 決断の無言歌
-コンコン-
-ガチャ-
「失礼するぞ。具合はどうだ?」
桜音さんが見舞い品としてくれたお菓子を食べていたら、タイミングを見計らった様に病室の扉がノックされる。見舞いに来てくれたのは想像通り部員達で、静かだった病室が賑やかになる。
「あ!何か美味しそうなもの食べてる!」
「フィナンシェじゃん」
「例の子からか?」
「うん」
「え!何で分かるんすか!?」
察しのいい柳が言うと仁王はニヤニヤして赤也は不思議な顔をする。うーん、俺って意外と分かりやすいのかな?
「これだけ綺麗に花を生けようとする男は居ないだろう。となると女性だが…妹だとその嗜みは無い。母親とは少し花の趣味が違う様に見える」
流石データマンと言うべきか。
「花言葉は"王者の風格""気高さ""希望""常に前進"って意味があるらしいよ」
一同「!」
「氷帝にマネージャー、いただろ?その子と親友みたいで俺達の事知ってたんだって」
「いたっすか?」
「いたっけ?」
「言われてみれば居た様な…」
居た様な気は確かにするけど、どんな人だったか思い出せない。小さくて天真爛漫くらいのイメージしかない。
※※※
『ただいまー』
「「ねぇね、おかえりー」」
「「お帰りなさーい」」
「…おかえり」
『………!お母さん!』
病院から帰ってくると出迎えてくれるキョーダイ達。そして珍しく家に帰ってきてるお母さん。
「話があるわ」
『…学校の事でしょ』
ジャケットとマフラーを脱いで玄関先に置いてあるハンガーにかけて荷物と返してもらったコートを部屋の入口に置いてキッチンに向かう。
「4月から近くの学校に通いなさい」
『そーやっていつも自分達の都合でアタシ達子供を振り回すのね』
「智桜姫!」
『っ………分かってる』
「姉さんが手配してくれるわ。編入試験あるみたいだから勉強しっかりね」
『叔母ちゃんが?』
昔っからそう。勝手に借金こさえて支払えなくなったら叔母のところに泣き寝入りして。助けてもらってチャラになったかと思うと、またこさえて。でも流石に何度も助けられないから離婚して子供全員引き取って母子家庭になってチャラにして。