第4章 小指の小曲
『へっ…くしっ』
うーん、流石にこの時期にコート無しはちょっと寒いな。かと言って中に着込むとゴワゴワして動きにくいし。
『一昨日?くらいからコート着てないよね?どうしたの?』
「せやで。この時期コート着ないなんて風邪引きに行ってる様なもんや」
『あー…ちょっと汚しちゃって。クリーニングに出してるんだよね』
「………、今日の持ち物検査」
『………うっ』
「生徒手帳忘れてたやろ?」
だって胸ポケットに手帳入れると邪魔だからコートに入れっぱなしだし…かと言ってコートは…
『い、家に忘れてきただけだから』
そんな下校時間。いつもの様に実亞加と忍足君と昇降口まで行ってローファーに履き替える。
『ゆーし、今日の部活ちょっと遅れてから行く』
「何でなん?」
『このままじゃ智桜姫、風邪引いちゃうもん。駅までくっ付いて送ってくる』
『え!?そんな…』
「駅まで送ったらダッシュやでー」
『はーい』
-ぎゅう-
『ありがと』
※※※
-ざわざわ-
『んー?何か校門、騒がしいね』
そう言われると校門には人集りが出来ていて賑やか。テニスコート程では無いけど。
「桜音さーん」
『『!』』
「何かすっごく可愛い女の子が桜音さんの事待ってるみたい」
『すっごく可愛い女の子?』
「うん、お人形さんみたいな………多分小学生くらいかな?」
小学生くらいのお人形さんみたいな可愛い女の子…?妹の友達だった子にそんな子居たかなー?妹達はもう神奈川の小学校に転校してるから初等部で友達だった子が何か聞きに来たとか…
「あー!!!」
「あ、あの子あの子」
ふわふわした藍色の長い髪の毛。優しげな目元。こんな子、妹の友達には居なかった………けどどっかで見た事ある様な。
『えーと…』
『知ってる子?』
『ううん…』
取り敢えず目線を合わせる為に屈んでみると頬を赤らめて1歩後ずさる。怖い、のかな?子供に好かれる自信はあるんだけど。
『どうしたの?』
「~っ!」
-パタパタ-
『………』
『行っちゃった…何だったの?あの子』
『うーん…心当たり無いんだよなぁ』