第1章 恋の始まり
「お姉さん!肉まんください!」
次の日はあの3人だけじゃなく、後輩らしき5人も加わって、狭い店の中は少しごったがえした。
「お、お姉さん⁉」
あなたたちからしたらおばさんじゃないの?と思わず前髪の一部を金色に染めた小柄な男の子におうむ返しに言ってしまったが、彼は気にしていないようだった。
「あ、俺も俺も!肉まん欲しいっす!」
昨日の3人が静かだったからか、今日の落差に少しめまいがする。
「待て待て西谷、田中」
昨日も来ていた短髪の男の子が二人を諌める。
「すみません、あの肉まん8個ください。」
少し困ったように眉を下げながらその子は私に注文する。
「はい。」
私が肉まんを取り出しているとき、
「次々に言うと店の人も困るだろ?」
と昨日の爽やかな子の声が聞こえて、思わず肉まんを取り落としそうになる。
「8個で1480円です。」
と言うと、短髪の男の子が払う。
どうやら今日は彼の奢りらしい。
うーん今まで見てきてこの人が主将さんかな?
「すみません、うちのやつらがうるさくて。」
と謝ってくる辺り、フォローが完璧である。将来就職したら気に入られるタイプだろうな。
「いえいえ、若いうちは元気なのが一番ですよ」
と笑ったが、なんともばばくさい発言をしてしまい、恥ずかしくなった。
「あんまり長居しても邪魔になるから外に出るぞ」
と短髪の子がみんなに声をかけてみんながぞろぞろ出ていく。その一団の最後尾にいたあの子が私の方を振り向いて笑顔で会釈した。
ドキンと心臓が鳴る。
慌てて
「ありがとうございましたー。」
とお辞儀をした。
今の赤くなった顔、見られなかったかな…。
彼の笑顔はとても無邪気に見えて、何だか私の持っていない何かを持っているように見えた。