第1章 恋の始まり
「どうかしたか、桜」
繋心は座り込んでカウンターから姿が見えなくなった私を覗きこむ。
「いやー。えーっと…。何でもない」
私は顔を両手で隠したまま答える。きっと今の私の顔は真っ赤だろう。あの男の子に一目惚れしてしまったことを繋心にばれるのは恥ずかしかった。
「…何でもなくは無さそうだけどな。」
いつまで座り込んでんだと繋心が私に手を差し出す。私はその手をつかんで立ち上がった。
「…今の彼らはバレー部だよね?」
「ああ、よく部活帰りにここに来る。今までは冬休みだったから、腹を空かせて晩メシ前にってことはあんまりなかったけど、またちょくちょく来るだろうな。」
…そっか彼らは冬休みとかあるもんね。何でお正月明けから働きだしたのに今まで会わなかったのか合点がいった。
「…懐かしいのか?」
繋心が私に尋ねた。そう、私と繋心は幼馴染みで、高校生の時は私は繋心の影響でバレー部のマネージャーになったのだ。
その頃は烏野は強豪で、マネージャーの仕事も大変だった。
「今も烏野って強いの?」
大学で県外に行ってしまってからバレーに関わりが無くなった私は全く今の烏野のことを知らない。
「いや、今はあんまり。」
「そっか…。」
それでも高校生の時の楽しい思い出がよみがえり、今を謳歌している彼が羨ましく思えた。