第5章 合宿
「そういやさー。俺ゴールデンウィーク中、バレー部の合宿あって店番できないんだ。代わりに母ちゃん来るけどお前どうする?」
店に誰もいないお昼時、繋心は新聞を読みながらそう尋ねてきた。
「どうするって…。いつも通り働いちゃダメかなぁ。」
繋心の質問の意図がわからなくて首を傾げる。はっ、まさかアルバイトやめろとかそういうことですか。
「いや、母ちゃんと話してたんだけどお前合宿に付き添いで来ないか?」
「はっ、え、え、なんで?」
そう言われる理由が見つからなくて私は混乱した。
「いや、スポーツって怪我がつきものだろ?だからたいてい昔でも付き添い看護師の人がいたじゃねぇか。まぁ、今回は遠征とかじゃあねぇから外部から呼び寄せるのもあれだし、よく考えればお前、看護師の資格持ってたなって」
そう、私は烏野に戻る前に看護師をしていたのだ。しかしあることがきっかけで辞めてしまった。
「もちろんただでやれとは言わない。桜は四六時中合宿メンバーといることになるし、仕事になるからな。…いやか?」
私が俯いていたのを見て、繋心は少し弱気になったらしい。最後は少し眉を下げながら私の方を見る。
私だっていつかは看護系の仕事に復帰しようと思っていた。それに、知らない場所で働く訳じゃない。
「…。それ、引き受けるよ。でもお金はいらない。」
「えっ。」
「それは烏野のみんなのために使って。私は付き添い看護師としてじゃなくて、OBの看護師として今回引き受けるから。」
烏野を素直に応援しているし、こういうことでお金が絡んでくるのは嫌だからだ。
それにしても…。菅原君もいるんだよね。彼のプレーを観れるかもしれないので、私は少しそわそわしてしまった。