第5章 合宿
繋心がコーチとして烏野に行った次の日ぐらいから、再び3年生が三人で坂ノ下に来るようになった。何があったかは知らないけれど、菅原君が前よりずっと楽しそうな表情だから安心している
「榎本さんって町内会チームの人と関りあるんですか?」
最近店に来るたびに、たわいもない会話を菅原君と交わすことが日常になっている。私は菅原君が買ったシャーペンの芯や、お菓子を袋に詰めながら答えた。
「ありますよ。みんな大体は烏野高校のバレー部同士ですし。」
ああ、品物詰めるのできるだけ遅く詰めたいな。だってその方が菅原君とおしゃべりできるし。いや、でもそんなちんたらするなんて…公私はわきまえないと…!
などと私は心の中で葛藤しているのをひたすら隠し続ける。
「この前、鵜養コーチが指導しに来てくださったとき、めっちゃびっくりしました。まさか、あの人が鵜養監督のお孫さんだなんて全く知らなかったんで」
「まぁ、あんまり似てないですしね。」
気だるそうに煙草を吸う姿からはあの厳しい監督の面影は一切無い。
「でも繋心は監督と一緒で、指導は的確だけどえげつないから頑張ってください」
自分は練習に顔を出せないので、精一杯の気持ちをこめてそう言った。
「ありがとうございます」
じゃあさようなら。と駆け出した菅原君の行く先には二人が待っていた。
「スガ、あの人と仲良いよな。」
「優しくていい人だべー。大地も一回話してみろよ!」
「年上のお姉さんに話しかける勇気があるのがすごいなぁ。」
主将さんと、大人っぽい子になんやかんや言われて、そう答えるのを聞いた私は少しにやけてしまった。
好きな人に誉められるのは正直嬉しい。
このあと繋心が何気持ち悪い顔してんだ、と言ってくるまで私のにやけは止まらなかった。