第4章 春の訪れ
「…ったく。俺はやらないつってんのに…。」
繋心が頭をかきながらそう呟いた。
「繋心。今の人は?」
「あ?ああ。さっきの人は烏野のバレー部の顧問らしい。なんか俺がじいさんの孫だからって熱心に監督になってくれって言ってくるんだよ。」
「やればいいのに。繋心って教えるの上手いと思うよ。」
私は高校時代、繋心が後輩に熱心に教える姿を見ている。それに、繋心が教えたおかげでどんどん成長した選手もいた。
繋心自身はベンチだったけど、本当に昔から人の長所を伸ばすのが上手だ。
「んなこと言われてもなー。桜だって昔してたから、もう一度やってくれって言われても困ることあるだろ?」
そう言われて私はどきっとする。そうだ。私だってここに戻ってきたのに、もう一度仕事に戻ってこいと言われたら複雑になる。
繋心だって自分では何も言わないけれど、ベンチだったのに不満はあっただろうし、それを引け目に監督になろうと思えないのかもしれない。
「ごめん、繋心。考えなしだったね。」
繋心の心にずかずかと踏み込んでしまったことに申し訳なく感じる。
「いや、いいよ別に。」
さー、さっさと残り少ない時間頑張って働くぞー。
と言って持ち場に戻った彼はやはり優しい。
監督かぁ。鵜養監督は本当に厳しい人だったけど、みんな一生懸命についていってたな。あの頃のみんなは本当に輝いてた。
菅原君も練習してるときすごく輝いてるんだろうなぁ。と少し考えてしまって、何やら恥ずかしい気持ちになる。
菅原君の練習風景見てみたいな。
今の高校生が本当に羨ましい。どうしようもないのに、高校生に戻りたくなった。