第4章 春の訪れ
繋心、結局コーチの話はどうなったんだろう。私は機嫌よく歌いながらはたきで棚を掃除している繋心をチラ見しながらレジに立っている。
すると、店の入り口付近で何やらもぞもぞ動く黒いものを発見した。どうやらあの先生のようだ。
繋心に用があるんだろうと思い、声をかけようとしたら、繋心も気がついたらしい。
「思い出は~帰らず~、ギャー!」
久しぶりに聴く彼の叫び声で、思わず笑いそうになった。
繋心は怒っているのと、律儀な性格だから先生に断ろうとするためにズカズカと店の外に出ていく。
しばらく何やら話していたが、突然繋心が先生の胸ぐらを掴んでいるのが見えた。
喧嘩?止めようと思い、私は店の外に出ていく。すると、繋心の声が聞こえた。
「練習何時からだ
音駒が来るっつうのに情けない後輩見せられるか!」
どうやらコーチを引き受けるらしい。私はそっと店の中に戻る。
音駒と試合するんだなぁ。懐かしい。見たいなぁ試合。ごみ捨て場の決戦をねぇ。
思わずクスリと笑う。あの頃は本当に楽しい思い出がたくさん詰まっている。
そのとき繋心が店の中に戻ってきた。
「コーチ引き受けるんだね」
「ああ。どうにかしてあのじいさんをやっつけないといけないからな。」
とさっそく作戦を考えているらしく何やらぶつぶつ呟いている。
遅めの春が訪れた烏野では、何か新たなことが動き出そうとしていた。