第4章 春の訪れ
「あ、はい。構いません。」
私の返事を聞いて菅原君は隣のブランコに座った。
「うわー、目線が低い!」
子供でも幼児が座れるようにかだいぶん低い位置に設置されているブランコに菅原君は何やら興奮気味だった。
菅原君は長い足を曲げている。とてつもなく座りにくそうだ。
「久しぶりにこういうの乗るっていいですね!」
そんな辛い体勢にも関わらず菅原君は楽しそうで私も恥ずかしいのは置いておいて笑う。
「そうですね。なんだか羽目をはずしたくなります。」
久しぶりにたちこぎをやってみようと思い立ち、私はブランコに立った。今日はジーパンをはいているので、何も気にしなくていいのが幸いだ。
「いいですねー。」
菅原君も私の後に続いた。
しばらく二人でブランコをこぎ、心地よい風を頬に受けながら過ごす。
そして再びブランコに座り直した頃、菅原君はポツリと言葉をもらした。
「榎本さんって絶対的な才能をもった人にあったことってありますか?」
「ありますよ?何せ私がマネージャーしてた頃、彼がいましたから。」
「彼?」
「小さな巨人の彼です。」
「ええっ!?」
菅原君が思わず立ち上がった。小さな巨人は烏野バレー部の伝説とも言えるべきことだもんね。
「榎本さんの代ってちょうどその頃だったんですね!」
菅原君の目は輝いていて、彼も根っからのバレー好きなんだと改めて思った。
「でもいきなりどうしたんですか、菅原君。何かありました?」
私はこの話題をふったときの彼の表情が頭から離れないのだ。