第4章 春の訪れ
わっ、なんだろう。宣戦布告かな。最近の若い子は先輩にそんなこと言えるんだ。勇気あるなぁ。
と私は盗み聞きしてしまったことに少し申し訳なさを感じ、静かにそこから立ち去る。
でもなんだか羨ましかったなぁ。私は自宅に向かいながらさっきの一こまを思い返していた。
なんだか自分の力がまだまだ無限大だと信じることができるギリギリの年ごろで、何かにひたむきになっている姿はあまりにも眩しかった。
自分もあんな頃があったんだなと思うとあの頃に戻りたいという叶いもしない願いが込み上げてくる。
仲間を信じ、お互いを気にかけて、一瞬一瞬を大事にする。そして重ねた努力はいつか叶うと信じて黙々とうちこむ。
私はそれが出来なくなってこの町に戻ってきた。仕事を失ったのもそうだ。
そんな中で気にかけてくれた母親や繋心には感謝している。…それでももうあの頃みたいに何も疑わずに生きるのはもうだめだろうな。
とてつもなく寂しい気持ちが心の中を駆け巡った。その時ふと公園が目に入って足をとめる。
「わぁ、懐かしい…」
思わず私はそう口に出していた。
昔部活帰りに同じマネージャーだった子とブランコに座っておしゃべりをした公園だ。たまにそこに繋心が加わったり、私一人で座って涙を流したこともある。
なんだろう。この町に戻ってから、坂ノ下商店と家を行き来してばっかりだったけど、菅原君と会ってからだろうか。いつものこの道が少し視界が開けた気がした。
こういった懐かしい物が目に入ったり、電柱の陰に咲くタンポポを見て頑張れと声をかけたくなったり。
菅原君は私に恋ごころ以外にもたくさんの贈り物をくれているのだ。