第4章 春の訪れ
「ちはーっす」
菅原君が言っていた一年生の3対3の試合をするという土曜日。私は結局どうなったんだろうと気になりながらも店番をし、そろそろ繋心と交代しようと考えていた時だった。
懐かしいあの黒のジャージの男子が入ってくる。一瞬菅原君かと思ったけれど、澤村くんだった。
「すみません、肉まんください」
そして彼は肉まんを大量に購入した。きっと表にいる部員たちに奢るのだろう。
前々から思っていたけれど、最近の高校生は財布が潤っているのだろうか。私はそんなに頻繁に寄り道して食べ物を買った記憶が無い。
ただ単に成長期の男子とは全然食べる量が違うのもあるだろうし、私と違って男の子が食にお金をかけているだけかもしれないけれど。
「おーい、そろそろ交代の時間だろ?」
繋心が店の奥にある部屋から顔を覗かせた。
「あ、そうだね。私、そろそろ帰るね」
「おう、気を付けて帰れよ」
「やだなー、繋心。まだまだ明るいから大丈夫だよ」
私が笑うと繋心は少しそっぽを向く
「こういうのは挨拶みたいなもんだろ。からかうなよ」
「ごめんごめん」
私は繋心が出てきた奥の部屋に行ってエプロンを吊るしたあと、鞄を持って店の裏口から出る。
すると
「俺、負けません!」
と言う男の子の声が聞こえる。あまりにも力のこもった声だったので、思わず店の表に少しだけ顔を覗かせた。
どうやら菅原君と一年生らしき男の子がしゃべっているようだ。