第4章 春の訪れ
「いらっしゃいませー」
今日は3年生になったばかりのあの2人だった。あれ?あの体格の良い男の子はどうしたんだろう。
そういえば彼を先月の途中から見ていない気がする。喧嘩中…なのだろうか。
「肉まん下さい」
「はい。」
たしかキャプテンの子がそう注文したけれど、どことなく悩ましげな表情だった。何かあったのかな…。
「大地、そんなに落ち込むなって。もうあいつらもこりただろうしさ。もうあんなことおきないべ」
と菅原君が慰めるから、余計に気になった。
「ああ、そうだな…。もしかすると夢に出るかもって悩んでたけど、そうやって考えた方が実現しそうだしやめておく。」
「お待たせしました。180円になります。」
私がそういうと澤村君は財布を取り出す。その時、何気なく菅原君と目が合った。菅原君に笑顔を向けられてドキドキしてしまう。それを表に出さないようにしながら澤村君と会計のやり取りを済ませた。
どうやら菅原君は今日はただついてきただけのようだった。話せなくて残念だが、笑いかけてもらえたからそれで十分だと二人の背中を見送っていると、菅原君が少しこちらを振り向いて、小さく手を振る。
私が慌てて会釈を返したとき、彼らは店の外に出た。
菅原君に仲の良い店員として思ってもらえるようになったのかな?
澤村君がいる隣で笑いかけてくれたり、手を振ってくれたのはすごくドキドキした。
菅原君って笑顔が可愛いからずるいって思っていたけれど、もう全部がずるい。
私はそう思いながら鳴りやまない心臓をなだめていた。