第4章 春の訪れ
「ねー、繋心。今日から烏野新学期だね。」
私は店の外を眺めながらそう言った。
店のガラス越しに友達と登校する高校生達が見える。二人で肩を叩きながら笑ったりしていて、学校生活が楽しくてたまらないんだな、と思えた。
「それ、もしかして最近仲のいい高校生のこと考えてるんだろ?」
繋心が新聞を広げながらそう言った言葉に思わず肩を揺らす。
「ま、まぁね。あのころ楽しかったなぁ。ってその子から聞いた話で思い返したりしてて楽しいよ。」
「ふーん。お前が高校卒業してから男とまともに喋るのあんまり見たことなかったから、なんか驚いたんだよなぁ。」
なんだ、そうだったのか。と納得した繋心は新聞に目を走らせる。
「な、何言ってんの。高校生なんてそんなに歳が離れてたら男の認識あんまり無いよ。」
と少し笑ってみたが、その言葉が自分に跳ね返ってきたような気がしてちくりと心が痛む。
そんなに歳離れてたら、女として見てもらえない。
自分の頭で思わず変換してしまう。
あー、やだやだ。私は実らないなりに楽しもうと思っているのに。
いいんだ、それでも私は菅原君と話せたら満足なんだから。
私は自分を戒めた。そんなことするならもっとポジティブなことを考えよう。
今日はもしかすると菅原君が来るかもしれない。
新しいクラスのこととか、部活のことを話してくれるかもしれない。
でもそんなんじゃいっつも受け身だし、勇気を出して自分から何か話題をふってみようかな。
そう考えると、さっきよりは元気が出た気がした。