第2章 あなたの名前を教えて
「それで麻婆肉まんは数が限られているから、取り置きしましょうかって榎本さんに言われて。俺もそれならと思って水曜日に毎回取り置きしてもらってるわけ。」
「なるほどなぁ。」
そこまでして食べたいのか、とまで言われたので思わず不満を隠せない。
「だって期間限定だし。そう言われると食べたくなるべ。」
思わずいじけたような声が出てしまう。
「まぁ、それぐらい好きなものがあるのは、悪いわけではないもんな。俺もバレーのシューズが期間限定で安くなるって言われたら取り置きして欲しくなるし。」
と大地は自身に置き換えて考えている。二人には今一俺の説明が通じたのか不安だったが、これは一体どういう解釈に至った訳だろう。
俺は部室に新しく貼られたアイドルのポスターを見て唖然とする。
スガ 年上好き
という付箋が貼ってあるのだ。他にも巨乳好き 大地とか、田中 変態 といったものもある。
「ちょ、ちょっとこれ何!?」
先に来て着替えていた大地に駆け寄る。
「おー、スガ。お前が委員会でいない間になんかそれぞれ好みを書こうってなってな。とりあえず不在のスガは坂ノ下のあの人が気になっていそうな気がすると旭が言ったから書いといたぞ。」
「か、書いといたって…、誤解を生むだろ!」
「まーまー、スガ。落ち着いて。別にあの人が見るわけじゃないんだからさ。」
などと大地はのんきにいうがなんだか俺は大事なことを暴露されたような気分がしてさっきから恥ずかしくてしょうがない。
「後で旭に文句言ってやる。」
結局その付箋は、俺が練習のために急いで着替えたり何やらしていたら剥がすのをすっかり忘れさっていた。