第2章 あなたの名前を教えて
榎本さん、以外と内気な性格なのかな。
俺は坂ノ下商店を後にして、みんなと家路に向かいながらそんなことを考える。
なんだかはっきりした目鼻立ちの人だからなんとなくさばさばした人だと思っていたのだけれど、田中の自己紹介に困惑していたりとなんだか最近可愛らしい一面を見受けることがある。
「それにしてもあの榎本さんっていうんすね!てっきり坂ノ下さんかと思ってたっす。」
と田中が美人な女性と話せたからかテンションあげあげな状態でがなりたてている。
「そういえばそうだな。俺もてっきりあの坂ノ下商店の兄ちゃんの奥さんだと思ってたぜ。」
西谷の発言に、俺は首をひねった。
どうして俺、彼女を奥さんと思わなかったんだろう。
前に名札を見るとき、そう言えばあの人の名前はなんだろうなと何気なく見たのだが、坂ノ下商店はどうやら親子で営んでいるので、普通に考えれば坂ノ下さんの可能性の方が高い。
かんかな…。だとしたら俺、すごい気がするけど。
「もしかしたら婚約者、とかかもしれないなぁ。」
縁下がのんびりと二人の会話に加わるのを横目に俺は考え続ける。
「…い、おい、スガ?」
はっとすると大地が俺に話しかけていた。どうやら何度も呼び掛けてくれたようだった。
「悪い、何?ぼーっとしてたわ。」
「いや、お前いつの間にあの人と仲良くなったんだろうなって。」
仲…いいんだろうか。取り置きしてもらってる関係でしかないけど。
「えっと、激辛麻婆肉まんが最近あの店で売られてるの知ってる?」
「げ、激辛…。」
旭がびびった顔をしている。
「お前相変わらず麻婆好きだな。」
大地にもあきれられた顔をされたが、俺は気にしない。麻婆はあんなに美味しいのに、みんなわからないなんて人生の半分以上損している。