第13章 墓前の誓い
あの花火の日から、丁度1週間が経った。
真夏日が続き、毎日セミの鳴く声を聴きながら、夏を感じる。
その日、及川は週一回のオフを使って、とある場所へ足を運んだ。
手には、花。
向かった先は、
「リオ・・・・・・」
初めて訪れる場所に刻まれた、知っている人の名前・・・
「"こっちのリオ"は、久しぶり・・・かな?」
リオの眠る、霊園だった。
夏の強い日差しに照らされたリオの墓石。
墓参りをしに来た及川は、手に持っていた花を置き、水をくんでくる。
バケツに入った水を、桶で頭からかけながら、手で丁寧に表面を磨いていく。
「慣れてるね、徹くん」
及川に、ついてきてと言われてきたリオ。
綺麗になる自身の墓石を見ながら、感心している。
「うん。爺ちゃんの墓参りとか、よく行ったしね。簡単だけど、ホコリとか被ってるの嫌じゃん」
一通り綺麗にして、今度は綺麗な水を入れ、中に花をさす。
そして、しゃがみこみ、裏に刻まれた、リオの名前を・・・ゆっくりとなぞる。
「本当に亡くなってるんだね・・・リオ」
その事実を突きつけるように、そこに掘られた彼女の名。
没日は、ミオと見に行った花火大会の日付だった。
「うん・・・」
はっと気づけば、死神の世界にいた。
「私は死ぬつもりは無かったけど、道路に飛び出してこけて、それで轢かれたから、結果的に、自殺志願者だと思われたみたいで死神になったの」
誰も知らない、誰にも触れられない体になってしまった・・・
「でも、私、徹くんに出逢えたから、死神になって良かったってる思うよ」
リオは、さしてくれた花に触れる。
「徹くんに出会わなかったら、私、ミオがあんな風に思ってくれてたなんて、きっと知らずにいた・・・」
ミオがずっと苦しんでいたこと・・・
今でも、大好きだといってくれていたこと・・・
彼がいなかったら、きっと何も、知らずにいた・・・
「本当にありがとう、徹くん・・・」
にっこりと笑うリオ。