第10章 近づく距離
帰りの電車の中。
帰る方向が同じの及川とミオは、今日も隣に座った。
「へぇ、ミオって、休みの日でもバレーしたりするんだ」
「はい。私、昔は体弱くて運動もできなかったんで・・・いつも外で遊べてたリオがすっごく羨ましくて・・・。元気になった今でも運動できるのが嬉しくて、動きたくてうずうずしちゃうんですよね」
彼女の口から初めてリオの名前が出た。
「知ってると思いますけど、リオは結構運動神経も良くて・・・及川さんたちともよく遊んでましたよね。私もはやく交ざりたいなぁって思ってました」
「そうだったんだ・・・」
以前、リオから、ミオのことを聞いた。
部屋の中から、外で遊ぶ自分とリオを見て・・・
"わたしも、はやくげんきになって、とおるくんとあそびたい"
そう思ってくれていたと。
「じゃあさ、元気になったんだし、一緒に遊ぼうよ。」
無意識に、そんな言葉を口走っていた。
「え?」
きょとんとして自分を見上げるミオ。
(なーに言ってんの、俺っ)
自分で自分が言った言葉に驚く。
「いや、ほらさ?一緒にバレーしたりトレーニングとかした方が楽しいかなぁーって」
「確かに。いいんですか?」
パッと顔を輝かせるミオ。
不意に昼間のビキニ姿を思い出してしまう。
「う、うん・・・」
その後及川は、赤らめた顔を隠すように、口元を覆った。
それからというもの、及川とミオの距離はより近づいて行くこととなったーーー・・・