第10章 近づく距離
笑顔が眩しい。
試合に勝ったらしく、ミオ達はこちらに戻ってくる。そして、女バレの応援組の中に混ざっていく。
汗を拭う姿さえも美しく、そして色っぽい。
飲み物を買いに行こうとする彼女に合わせて、及川も席を立った。
「ミオ!」
「あ、及川さん」
軽く声をかけると、パッと顔を上げて自分を見上げるミオ。
「ビーチ初心者ってほんと?結構上手かったじゃん」
「本当ですよ、インドアと違って全然動けないです」
彼女は水着姿のままで、恥ずかしそうに笑う。
「バスタオルとか持ってないの?このままあっち行くの、まずいんじゃない?」
流石にこの水着姿でウロウロされては、敵を生産しまくってしまう・・・
「あ、あるんですけど、さっき海の方に飛ばされちゃって・・・水で洗って今あっちで干してるんです」
そう言って指差す場所には、説明通り、真っ白のバスタオルがはためいている。
「しょうがないな・・・」
及川は肩を竦め、自身の着ていた薄手の長袖を彼女のむき出しの肩に掛けてやった。
「これ着て起きなよ。焼けたら大変だし」
「日焼け止めは塗ってますけど・・・」
「いいの。試合する時以外、脱いじゃダメだからね?脱いだらデコピンね」
遠慮して返そうとする彼女の体を隠すように、掛けた服の裾と裾を合わせる。
(これ以上この谷間を人に晒さないで・・・っ)
と、念を込めたいくらいだった。
「ふふ、分かりました。ありがとうございます」
照れくさそうにミオは微笑み、及川もつられて笑ってしまったーーー・・・