第10章 近づく距離
朝、通学する時はミオと。彼女をからかいながら過ごす。
夜はリオが家に来て、家に誰もいない時は一緒にカップラーメンを食べて談笑したり・・・
2人は同じ顔をしてるのに、性格は全然違って、
どちらと過ごす時間も、及川は楽しい、そう感じていた・・・
そんな日々が続き、初夏の七月がやって来たーーー・・・
土曜日。
及川は大学ではなく、海へくり出していた。
今日はビーチバレー大会。及川のチームからもペアでエントリーしているのが何組かおり、他のチームメイトはその応援に来ていた。
「あっつ〜」
タオルを頭に乗せ、サングラスをかけて石階段に座っている及川たちにジリジリと差す太陽。
目の前には真っ白な砂と、真っ青な海が広がっている。
「今年は例年よりも日差しがきっついな・・・」
去年及川はこのビーチバレー大会で勝ち進み、東北代表のペアとして全国大会も経験したことがあったが、今年は練習時間が教育実習と重なったために、出場は辞退した。
という訳で応援組に混ざっているのだが、とにかく今年は暑いと感じた。
持参した飲み物も何本も開け、暑さを凌いでいると・・・
「お、女バレのあの子、結構いい体してんのな」
「確かに。色白いな、あれは、そそる」
と、どこからか声がして、及川は顔を上げた。
「どこどこっ?」
「ほら、及川、あっこ」
そうしてチームメイトが指さす場所では、
ミオが、試合をしていた。
黒い水着を身につけた彼女の肌は砂浜に負けず白く、何より華奢な体の割にふくよかな胸、腰から尻にかけてのラインが色っぽく存在感を示していた。
緩くウェーブのかかった黒髪は高い位置で束ねられ、潮風に揺れる。
「今あの子フリーなのかな」
「さぁてな、でもありゃ男が黙ってねぇなー」
チームメイトがミオをそういう目で見ている事が、何故か無性に腹が立つ。
(確かに、いい体してると思うけど・・・!)
許されるならここにいる男ども全員目潰ししたいとも思う。
そんな嫉妬にも似た感情を抱く及川の事なんて、知りもしないミオは、ペアのチームメイトと仲良くハイタッチしている。